タタールの女――コサックに捕えられた王族の妻、という設定での私の労作
この衣裳は上から下まで例の如くいい御機嫌で作ったもの、”現実逃避”の産物である
制作したこの作品も凝りにこってこれまた”現実逃避”の産物である、これを身につけ舞台に立って激情をほとぼらせた
この広い草原を、ウクライナの大地を、お前たちのものだと言っているのは勝手だが、このタタールもこの大地に生きている
この大地に生きているタタールが、おめおめと命ごいをするとはよもや思うまい、コサックにはコサックの誇りがあるように、タタールにも誇りがある
いいか、お前はやがて私に膝まづくことになろう、 罠に掛かって捕まった子鼠に噛みつかれることになるだろう、噛みつかれたらもうおしまい――
毒が体中にひろがってゆく。その毒は、えもいわれぬほど甘くかぐわしい香りがする――”
この当の本人はすでに遠くに住まいし、おだやかな家庭生活の中にあったので、沖縄からの学生に改めてモデルになってもらった
15世紀後半の、真横からの人物の上体を描く肖像の構図法を意識し、かつて藤島武二がやったように、一度はこういう装飾過多の古典的なものが描きたくて、やっと実現した――
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